【月刊・白鵬】通算1000勝へと
勢いづけた、石浦からのサプライズ

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 しかし夏場所後、私はケガに悩まされて、名古屋場所では10勝止まり。記録達成は決して簡単なものではありませんでした。そのまま、ケガの回復が思わしくなかった私は、翌秋場所では初日からの全休を決断。1000勝まであと3勝と迫りながら、治療を最優先し、記録達成はまたもや持ち越しとなってしまいました。

 迎えた九州場所、1000勝達成への意識は一層高まっていました。ただ、横綱を張って10年になりますが、今でも初日の土俵は緊張するもの。自らへの期待が膨らむ一方で、さまざまな不安が頭を掠めたりもしました。それでも、この初日には隠岐の海を破って白星発進。2日目も碧山を下して2連勝を飾って、1000勝まであと1勝となりました。

 実は、2連勝を決めた夜、宿舎に戻ってからサプライズが待っていました。この日、幕内初勝利を挙げた石浦が私の部屋に来て、「幕内で白星を挙げられたのは、横綱のおかげです」と、初めて受け取った懸賞金を私にプレゼントしてくれたのです。

 その瞬間、私は思わずウルッときました。石浦からもらった感謝の言葉と懸賞金のことは、生涯忘れることはないでしょう。

 聞けば、以前から石浦は、懸賞金をもらったら、私にプレゼントしようと思っていたそうなんです。そんな内弟子からの粋な計らいに、私も奮起しないわけにはいきません。勝負の3日目、魁聖を上手投げで下して、ついに通算1000勝を達成しました。

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