あわや102年ぶりの新入幕V。石浦はオーストラリアで相撲に目覚めた (4ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 2013年の初場所で初土俵。春に序ノ口、夏に序二段を優勝。5場所目には幕下昇進を果たし、順調に出世の階段を上っているかに見えたが、ここから壁が厚かった。十両昇進のチャンスがかかった2014年の夏場所では2勝5敗と初めての負け越しを経験。その後も足踏みが続く中で思い出したのも、「人と同じことをやっていても強くはなれない。上に行くためには、ひとつでもいいから人と違うことをやらないといけない」という白鵬の言葉だった。

 そこから稽古場の四股やすり足など、今まで以上の数を自らに課した。午後にはジムで筋力強化に集中し、スクワットでは力士でもトップ級の260キロを持ち上げるまでパワーを磨いた。「人がやらないこと」を日々積み重ねた結果、2015年春に新十両昇進。そして、今場所、新入幕で記録的な大活躍を果たした。

 目標は、昭和の土俵で、小兵ながら真っ向勝負で横綱や大関を苦しめた関脇・鷲羽山だ。同じ伊勢ケ浜一門である元関脇・旭天鵬の大島親方は「あの体は、普段の稽古の賜物。どれだけ努力しているのかが分かります。相撲も迷わず思いっきり取っている姿勢が素晴らしい。今、大型力士ばかりなので小さい力士は逆に相手はすごく嫌なもの。今場所のような相撲を取れば三役も見えてくると思います」と評価する。

 挫折で気づいた相撲への情熱。10連勝からの連敗もきっと来場所への糧にするはずだ。「思い切って取っていきたい」。新年の土俵で輝きを増した石浦がさらなる旋風を起こす。

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