あわや102年ぶりの新入幕V。
石浦はオーストラリアで相撲に目覚めた

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 石浦の父親は、大関・琴光喜ら多くの力士が輩出した高校相撲の名門、鳥取城北高校の石浦外喜義監督(55歳)で、自然と幼いころからまわしを締めて相撲に取り組んだ。鳥取城北高校では、同じ宮城野部屋の山口(27歳)と同期で、1学年下にはモンゴルから相撲留学していた貴ノ岩(26歳・貴乃花部屋)がいた。

 レギュラーとして団体戦で全国制覇を成し遂げ、自身も世界ジュニア選手権の軽量級で世界一に輝くなど実績を残し、山口と共に大学相撲の名門である日大へ進学。大学では、1学年下には遠藤(26歳・追手風部屋)がいる環境の中で切磋琢磨していたが、3年時に腸の病気で団体戦のメンバーから外れる。初めての大きな挫折と失望を味わい、卒業と同時に相撲と別れる決意をした。

 2012年春、彼が向かった先はオーストラリア・アデレード。語学留学が目的だったが、当時の心境を「とにかく、相撲を忘れ日本から離れたかった」と振り返る。アデレードでは、格闘家を目指そうとトレーニングに励む一方で、ハリウッド映画のオーディションを受けるなど、様々なことに挑戦した。そのかたわら、知り合いの依頼で現地の子供たちを対象にした相撲教室を開催。そうして指導するなかで「やっぱり、オレは相撲が好きなんだ」と眠っていた思いが沸き上がってきたという。

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