カド番⇒綱取りへ急浮上。豪栄道が全勝優勝を決めた「自分の型」 (4ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News


 大関在位12場所で4度の負け越し、二ケタ白星はたった1場所と不甲斐ない成績が続いた。それでも、場所中にあばら骨を骨折してテーピングをしても「虫に刺されただけッス」と言い切る男は、ケガを言い訳にはしなかった。

 悔しさと苦しさを打ち消すにために稽古に打ち込んだ。「感謝しても感謝しきれないほどの存在」という師匠の境川親方(元小結・両国)の熱い檄と、温かい声に支えられ汗を流した。名古屋場所では負け越したものの、ケガも癒え、迎えた夏巡業で納得する稽古を積むことができた。「自分の相撲を取りきる」と何度も言い聞かせ、鋭い出足から右を差す感覚と、大関昇進時につかんだ自信を取り戻した。

「思い通りにいかないことが多くてつらい日々もあったんですが、今日で少し報われました」と苦労した2年を振り返る言葉には、逆境を乗り越えた男だけが発する重みがあった。11月の九州場所は初の綱取りに挑む。師匠の境川親方が九州場所の担当部長を務めるのも何かの因縁だろう。

「いろんな人に支えられて今日があるので、その人たちに恩返しできたと思います」

 さらなる恩返しを胸に秘め、豪栄道は「自分の相撲」で横綱を目指す。

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