亡き千代の富士が"技と魂"を注入。モンゴル出身・千代翔馬の覚悟 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 来日した時の体重は70kgしかなく、「あんな大きな人とどうやって戦えばいいんだろう」と不安だった。しかし、同じく細身の体ながら精進を重ねて31回の優勝を手にし、"ウルフ"の異名をとった第58代横綱・千代の富士の指導を受け、「師匠のようになりたい」と稽古に没頭して新入幕をつかんだ。

 耳を疑う悲報が飛び込んできたのは、幕内昇進を確実にした歓喜の千秋楽からわずか8日後。7月31日、師匠がすい臓がんのため61歳でこの世を去ったのだ。

「体が悪いことは知っていましたが、まさか亡くなるなんて......。今でも信じられません」

 目に焼き付いているのは、昨年の6月、師匠の還暦土俵入りでの雄姿。現役時代を彷彿とさせる四股(しこ)とせり上がりを思い出しながら、「60歳であんなにカッコいい体をしている人はいませんよ。ふくらはぎなんかすごく太かったですし。あんな元気だった師匠が亡くなるなんて」と絶句。「『幕内に上がったらモンゴルに一緒に行こうな』と声をかけてもらっていたのに......」と目を潤ませた。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る