東京五輪の新種目スポーツクライミング。
W杯王者のいる日本は強豪国か

  • 津金一郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「何かを変えようと思って新しく取り入れたけど、最初のころは教えてもらったことが身体のなかでうまく消化できていなかった。それが、3戦目くらいからやっと馴染んできた」

 そうした努力が実を結び、W杯初優勝以降は他の選手が苦労する課題でも、楢崎だけがあっさりと完登というシーンが増え、毎大会2位以上という安定した成績を残すことにつながった。

 目覚ましい成長でW杯王者へと登りつめた楢崎が次に狙うのは、9月14日からフランス・パリで始まる世界選手権の優勝だ。2年に1度開催されるスポーツクライミング界最大のタイトルであり、過去に日本人選手は誰も手にしていない。楢崎は「優勝を狙っていきます」と二冠への意欲を隠さないが、ライバルたちもただ手をこまねいているわけではない。

 昨年のW杯王者で今季は年間4位に終わったチョン・ジョンウォン(韓国)、今季年間3位のアレクセイ・ルヴツォオフ(ロシア)、ダイナミックなムーブで人気のショーン・マコール(カナダ)などに加え、昨季の年間3位ながら今季はボルダリングW杯を欠場したアダム・オンドラ(チェコ)もエントリーしている。なにより、年間王者をW杯最終戦で楢崎にさらわれた最大のライバル・藤井が、「年間2位は全然うれしくないし、喜べない。世界選手権こそ僕が上回る」と、決意を固めている。

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