「もう2度とやりたくない」王者・内村航平を追い詰めた個人総合の激闘 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 その言葉を聞いたベルニャエフは、「航平さんはそう言うが、彼は自分の能力を信じている。だから、僕はこれからも一緒に競技をしたい。彼は世界で一番クールな人間だと思うし、これまでの獲得メダルの数からみればもう伝説になっている人」と、個人総合の続行を希望する。

 そんな内村は記者会見で外国人記者から「マイケル・フェルプスやウサイン・ボルトと同じくらいの存在になった感想は?」という質問を向けられると、こう答えた。

「僕の中では体操はまだそんなに有名ではないのかなと思っているので。フェルプス選手やボルト選手の名前は世界中誰に聞いてもわかるけど、内村といったら『誰だ、それは』となると思います。でも今回の五輪の個人総合で白熱した試合を見せられたと思うから、これをきっかけにして、彼らに負けないようにというか、自分の名前というよりは体操という競技をもっと広められたらいいと思います」

 09年世界選手権以来、王者であり続ける内村は、自分が体操の世界をさらに進化させてきたという自負も持っている。だからこそ、より多くの人にこの競技が持っている魅力を知ってもらいたいと思うのだ。20年東京五輪への挑戦も明言した彼の、東京へ向けた戦いには、「体操をもっと知ってもらいたい」という願いも付け加えられ、新たなスタートを切る。

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