「もう2度とやりたくない」王者・内村航平を追い詰めた個人総合の激闘 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 ベルニャエフの鉄棒は、Dスコア6.5点の構成だった。それをミス無くこなしたが、最後の着地では大きく一歩動いてしまった。結局彼の得点は14.800点で、合計では92.266点で内村を上回れず、内村の連覇が決まった。

 その瞬間、場内は歓声とともに、両者が死力を尽くした勝負をしたことを分かっていたからこそ、大きなため息も漏れた。

「ずっと団体で金メダルを獲ることを目標にしていたので、団体の後は少し気持ちが切れそうになったけれど、それでも頑張って気持ちを盛り上げていたから、今日は1種目も緩まなかったですね。いい試合ができていたからこそ負けても悔いはないと思っていたし。僕の中では展開的にも負けたかなと思っていたから、勝ちが決まった時は、ただただ『よかったな』と思っただけです。団体の時はうれしかったけど、今日は『やりきった!』というか、ホッとした気持ちの方が強いですね」

 終わった瞬間は「もう2度と個人総合はやりたくないな」と思ったと言って内村は苦笑いした。

「僕はあん馬とつり輪では14点台しか取れないけど、オレグは全種目で15点台を取れるうえに16点台を取れる種目を持っている強い選手。今回は勝てたけど、これから世界大会で彼と戦っても勝てる気はしない」

 そう続けて周囲の笑いを誘った。

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