ひたむきな姿勢と緻密な作戦で、三宅宏実が「奇跡の銅メダル」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 こう話す三宅は試技を終えて3位が確定すると、下ろしたバーベルに頬ずりをした。その理由を彼女は「バーベルは16年間共にずっと練習してきたパートナーでもあるので、メダルを獲った時には最後にバーベルにハグして終わろうと思っていた。それも自分の夢だったので、できてよかった」と説明した。

 大会前の状態を考えればスナッチが81kgに止まった瞬間に、正直メダルは無理だと思えた。ロンドン五輪後の世界選手権3大会の銅メダルラインはトータル190kg前後。クリーン&ジャークで109kgを挙げなければ、トータル190kgには届かない状況だったからだ。

 しかし、五輪特有の重圧は三宅に味方をした。トータル188kgは彼女が銀メダルを獲得したロンドン五輪に比べて10kgも低い記録だったが、三宅は「4年前とは年齢も調整方法も違っているし、重量もぜんぜん違っている。記録には納得いかないけれど、父からは『五輪で重要なのは、記録ではなく順位だ』と言われているし、何が起きるかわからないのが五輪だから。その中でメダルを獲れたことが、本当に嬉しい」と話した。

 ケガで苦しむ彼女に、スポーツ界に吹き荒れるドーピング問題も味方した。まさに彼女のひたむきな取り組みに対してプレゼントされたともいえる、奇跡の銅メダルだった。

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