ひたむきな姿勢と緻密な作戦で、三宅宏実が「奇跡の銅メダル」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 それでも三宅は勝負をかけた。クリーン&ジャークはスタート重量を最初に申請したものより下げることなく、昨年の世界選手権と同じ105kgに挑戦。それをきっちり差し挙げてトータルを186kgにし、まだ試技をしていない2名を除くと1位と1kg差の2位につけた。

 重量が106kgに上がると、3回目に成功したマルガリタ・エリセイエワ(カザフスタン)には並ばれて体重差で3位に落ちたものの、上位に来る可能性があったチャヌ・ミラバイ(インド)が2度の失敗で記録無しに終わって脱落してくれた。

 その後は、三宅が107kgを挙げれば、すでに競技を終了していたペアトリス・ピロン(ドミニカ共和国)を抜いて3位に上がれる状況になった。

 そんな勝負がかかった中で三宅は、最初の107kgを失敗。胸の上にバーベルをクリーンした瞬間に、左ひじが膝に接触する反則を犯したと判定されたからだった。しかし、それに動揺することなく、最後の3回目にはきっちりと決めた。

「3回目はすごく緊張しました。これを取れば3位になるけど、取れなければ5位と大きな差があるので『絶対に取ろう。取らなければ日本に帰れない』と思っていました。すべてに集中して取ることができたので、決まったときは素直に嬉しかったです」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る