IOCバッハ会長に聞く「リオ五輪で最も楽しみにしていることは?」 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 将来のオリンピックは、もっと簡素なものになるはずだ。2024年夏季オリンピックに立候補している都市のなかに、オリンピック公園の新設を計画しているところはひとつもない。オリンピック公園は大会が終われば、ほぼまちがいなく使い道に困る。

 簡素な会場でも、観客が減ることはないだろう。みんな競技を見に来るのであって、スタジアムを見に来るわけではない。大会開催に関する問題は、おそらくIOCが解決できるだろう。

 開会式が始まれば、開催都市の抱える問題はそれほど目立ったものではなくなる。今回の開会式では参加国に混じって、国家を持たない新たな選手団が行進する。僕がバッハにリオデジャネイロで最も楽しみにしていることは何かと尋ねると、彼は言った。「難民選手団がスタジアムに入場する瞬間だ。涙をこらえるのはむずかしいだろう」

 オリンピックは毎回、同じ物語をつむぎ出す。それは「ふつうの人間が世界の舞台で偉大なことを成し遂げた」というものだ。

 オリンピックは人類の進歩を見せる場だ。人類は4年ごとに、さらに完璧になっていく。1984年のロサンゼルス・オリンピックでは、この大会で初めて行なわれた女子マラソンで、スイスのガブリエル・アンデルセン・シエスが熱中症の症状を見せ、ふらつきながらゴールした。だが、今ではスパイダーマンのようなランニングスーツを着たタレントが、チャリティーのためにウルトラマラソンを平気で走る。

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