奇襲作戦、自転車大破、流血。
C・フルーム執念の「ツール2連覇」

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by AFLO

 そして、フランス革命記念日である7月14日(第12ステージ)には、とんでもないハプニングが起きた。「悪魔の棲む山」として知られる「モン・ヴァントゥ」で、コースにあふれ出た観客に前方をふさがれて急停車したカメラバイクに、フルームを含む3選手が激突。運悪くフルームの自転車だけが大破し、衝動的にランニングでゴールに向けて走り出す出来事もあった(このアクシデントによりフルームは大きく遅れたものの、審判団の審議の結果、救済処置で 首位の座をキープ)。

 さらに第19ステージでは終盤、雨で濡れた下りコーナーで落車。フルームのマイヨ・ジョーヌは大きく破け、ひざやひじから血がしたたり落ちた。しかし、フルームはチームメイトのゲラント・トーマス(イギリス)から自転車を借りてレースを続行。苦しみながらも総合成績の上位選手から10秒ほどの遅れでゴールし、首位のマイヨ・ジョーヌを守った。

 最後の勝負どころとなる、第20ステージも雨。フルームは2位に4分以上の大差をつけながら最後まで油断せず、ゴールまでの下り坂も細心の注意を払って走った。そして、4人のチームメイトに守られてフィニッシュラ インを通過したとき、フルームはようやく安堵の笑顔を浮かべる。こうしてフルームは、首位で最終日・第22ステージのパリへと到着した。

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