【月刊・白鵬】稀勢の里との大一番。苦しかった「真相」を明かす (4ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ともあれ、今場所ほど苦しんで手にした優勝は自分の中でもあまり記憶がありません。というのも、場所前から負傷を抱えていて、場所中にもケガを負って、身体的にも、精神的にもかなり厳しい状況にあったからです。

 ニュースなどでご覧になった方も多いかと思いますが、夏場所前の4月29日、両国国技館での一般公開された横綱審議委員会の稽古総見で、私は土俵に上がって相撲を取ることができませんでした。春場所(3月場所)後の巡業のときに痛めたヒザの具合が芳しくなく、大事をとってのことでした。

 その後も治療は慎重に重ねていましたが、ヒザの痛みがすぐに癒えることはありませんでした。ゆえに、ヒザの回復と相撲の調整のためには時間が必要でした。しかし今年の夏場所は例年よりも早くスタート。これほど不安を抱えて本場所に臨むことは、過去にもなかったことですね。

 加えて、場所の途中で右足の親指を負傷。さすがにこのときは、気持ちが折れそうになってしまいました。それでも、目の前の一番に集中し、結果が出たことで最後まで戦い切ることができました。

 千秋楽に全勝優勝を決めて、場所中は控えているお酒を口にしたときには、心の底から達成感を味わうことができました。両国国技館での優勝も、昨年の初場所(1月場所)以来、久しぶりのことでしたから、うれしさ倍増でしたね。

 本当にやりきった――。

 一夜明け会見の際に今の気持ちを問われたとき、「チョー、気持ちいい!」と発言したのは、自分の中でそんな思いが強かったから出た言葉でもあるんですよ。

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