【月刊・白鵬】稀勢の里との大一番。苦しかった「真相」を明かす

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 当事者である稀勢の里本人も、それは十分に感じていたと思います。実際、彼はそうしたファンの期待を後押しにして、白星街道を突き進んでいっているように見えました。

 そうして迎えた13日目、稀勢の里と私が対戦する結びの一番は、まるで千秋楽の優勝決定戦のような騒ぎになりました。稀勢の里が私を倒して優勝するか、その後も白星を重ねて優勝に準ずる成績を挙げれば、彼の横綱への道が拓けますからね。そんな雰囲気になるのも当然のことだったのでしょう。

 緊張感漂う立会い。互いに全力でぶつかっていきました。そして、ともに力を出し尽くした相撲は、私が下手投げで勝利。この大一番を制した私は、翌日の日馬富士戦にも勝って、稀勢の里が鶴竜に敗れたことで、37回目の優勝が決まりました。

 実は、稀勢の里戦を前にして、私は12日目の取組が終わったあと、ある場所を訪ねていました。都内にあるちゃんこ店です。私が所属する宮城野部屋のマネジャーが腕を振るうお店で、そこのつみれのちゃんこを食べることが、私の息抜きのひとつになっています。

 ただこの日は、かつてお世話になった方がお店にいらっしゃるということで訪問。美味しい鍋をつつきながら、懐かしい思い出話に花を咲かせました。今場所は「稀勢の里が大きな壁になる」と、その対戦に向けて緊張感を高めてきましたが、逆にこうした機会をもって、いい気分転換を図ることができました。おかげで、変に気負うこともなく、稀勢の里戦に臨めたのかもしません。

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