【レスリング】永田克彦「42歳での復帰とグレコローマンへの想い」 (3ページ目)

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

「オリンピックの道って、僕もずっとやってきたからわかるけど、相当大変なんですよ。これは何が大変かというと、来年選考会がありますよね。だから今、頑張ればいいとかそういうことではなくて、ロンドン五輪が終わったときから、下手したら、もっと前から選手たちは時間をかけて日々練習をしているわけです。実際、“五輪階級”の選手は(スパーリングなどを)やってみるとすごく強いです。一緒に練習をしても、なんとしてもオリンピックに行くんだという意気込みを感じるし、そこに向かって本当に死に物狂いでやっています。そういう選手に勝つためには、それくらいの練習や覚悟をしなければいけません。それだけ大変なことだと自分も経験からわかるので、今回も全日本選手権に出て勝ったら『次はオリンピックだ』なんて簡単に口にはできないんです」

 日本選手権終了後の、彼のレスラー人生について、先走りした質問をしそうな私の気持ちを察したのか、彼はそれを制するようにそう答えた。今回の復帰は来年行なわれるリオ五輪を見据えたものではけっしてなく、自身のベスト体重とも言える71㎏級の舞台で、教え子たちに何を見せられるのか、そこに主眼をおいた復帰だと彼は言いたかったのだ。

 永田が出場するグレコローマン71㎏級は、現在ふたつある非五輪階級のひとつだ。永田が銀メダルを手にした2000年のシドニー五輪では、女子レスリングがまだ正式種目化されていなかったこともあり、男子グレコローマンだけでも8階級あったのだが、IOCが推し進める「オリンピック肥大化防止」と「男女参画」の理念により、男子レスリングの階級枠は、女子の階級枠が増えていく一方で、回を重ねるごとに減少している。

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