被災地の「いま」を感じるために。3回目の「ツール・ド・東北」 (3ページ目)

  • 山口和幸●取材・文・撮影 text & photo by Yamaguchi Kazuyuki

 被害の大きかった三陸海岸を自転車で走ることによって、被災地の「いま」を感じることができる。震災直後は瓦礫が散らばり、道路も亀裂ばかりで補修も追いつかないほどだった。しばらくして大がかりな整備が始まり、土砂を積み込んだダンプの往来で路面は土色に。土盛りはできるものの、町に生活感はなかなか戻らない。

 そんな「いま」の、ありのままの姿を見てもらうために、このサイクリングイベントは年に一度行なわれている。確実に全国から集まってきた参加者と現地の人との新たな交流の場となっていると、主催者は手応えを感じているという。この日も家の前の沿道に繰り出し、声援を送る地元の人たちの姿が途切れることなく確認できた。ボランティアとして参加している人も多かった。自分の力だけで町々を突き進んでいく自転車という移動手段に、「頑張れ」と声援せずにはいられないという。

 参加者の人にとっても、「自転車という移動手段は、見知らぬ町と接するにはちょうどいいスピード」との声が多い。そこに、何があるかを感じ取る。興味が引くものがあったら、ブレーキをかけて引き返してもいい。地元の人にも自転車にまたがっていると、なぜか声をかけやすい。

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