【大相撲】関脇・栃煌山の覚醒は、部屋の指導システムにあり! (3ページ目)

  • 松岡建治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

「どの関取を誰が指導するかまでは決めていないけど、その都度、特定の力士を指導する親方が毎日の稽古の流れで決まっている」と師匠。ともすれば、船頭多くして船山に登るとなってしまいがちだが、今回、岩友親方が栃煌山を指導して結果を出した。また、ケガで三役から幕下まで落ちて、再び幕内に戻ってきた栃ノ心の復活を見ても、師匠が厳しく目を光らせている春日野部屋に限っては、そんな懸念は当たらないだろう。

 監督の意図を汲み取って、コーチが直接動く。これほど効率的で徹底した指導ができるのは春日野部屋ならではだ。実は、かつての相撲界はそうだったという。以前、先代の東関親方で元関脇・高見山の渡辺大五郎さんに聞いたことがある。

「私が入門した時の高砂部屋には、親方がたくさんいて新弟子にしこだけを教える親方とか、指導する役割が分かれていたんですよ」。今は渡辺さんが入門した時よりも、部屋の数が倍以上に増えて部屋付きの親方が減り、こうした部屋は少なくなった。春日野部屋は古き良き相撲部屋の指導システムを今に甦らせているとも言える。
 
 栃煌山の活躍は部屋の総力を結集した賜物でもあった。「もったいない相撲が多かった」。10勝5敗の結果に反省しきりだった栃煌山。ただ、三役3場所で33勝以上という大関昇進への起点を作ったことは事実だ。数多くの関取と稽古できる8月の夏巡業で、改造した立ち合いはさらに磨きがかかるだろう。28歳になっても進化できる姿は、他の力士にも刺激を与えたはず。9月にさらに飛躍し11月の九州で大関へ一気に駆け上がる……その確率はそう小さくないはずだ。

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