【大相撲】関脇・栃煌山の覚醒は、部屋の指導システムにあり! (2ページ目)

  • 松岡建治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 相撲は勝敗の8割が立ち合いで決まると言われるほど、それをいかに制すかが大きなポイントになる。師匠が言うように以前から指導されてはいたが、本格的に着手したのは、名古屋場所前から。岩友親方(元幕内・木村山)が付きっきりで指導した。場所中も全体の稽古が終わってから、2人で新たなフォームの改造に汗を流した。結果、今までよりも低く相手に当たれるようになり、これまで以上に力が相手に伝わるようになった。栃煌山の武器は、立ち合いの突進力とおっつけ気味の形からもろ差しになる速攻だ。フォームの改造で、より低く強い立ち合いを身につけたことが「覚醒」につながったのだ。
 
 まだまだ新フォームは、発展途上だろう。ただ、短期間で結果を出した背景には春日野部屋の指導システムがある。春日野親方は「今、オレは力士にはあまり直接、言わないようにしているんだ」と語る。理由は充実した指導陣にある。部屋には、師匠が現役時代に指導した部屋生え抜きの岩友親方、元小結・栃乃花の二十山(はたちやま)親方、元関脇・栃乃洋の竹縄親方、元幕内・栃栄の三保ヶ関の4人と他の部屋から転籍した富士ヶ根親方(元小結・大善)、待乳山(まつちやま)親方(元小結・播竜山)の6人の親方がいる。ひとつの部屋で6人もの親方を抱えるのは春日野部屋だけで、最多数だ。

 こうした状況に師匠は、具体的な指導は親方衆に任せることを決断。特に4人の生え抜き親方は、自らが指導してきた弟子だけに、自分が力士に対して言いたいことを言わずとも理解している。さらに年齢も若い親方衆は、より親身になって力士に指導できると判断したという。いわばプロ野球でいえば、師匠が監督で、親方衆はコーチと言える。

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