【大相撲】新大関・照ノ富士は、大鵬級の大横綱になる可能性がある! (3ページ目)

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • photo by Kyodo News

 ただ、歴代の横綱で例外がいる。優勝32回を記録した昭和の大横綱、大鵬だ。左右どちらの四つでも取れ、さらに突き押しも強烈な万能型の大鵬は、現役時代「形無し」などと批判の的になった。しかし、そのオールラウンドの天才的な取り口で32回もの賜杯を抱いたのだ。今の照ノ富士には大鵬に迫る可能性を感じることができる。それは、他の力士にはない大胆な発想と自分の力へのみなぎる自信だ。三役に上がる前、こんな話をしたことがある。

「対戦相手でやりやすいのは、絶対にこの形で来るっていう相手ですよ。だって、作戦が立てやすいじゃないですか」
 
 自分にとって、けんか四つとなる左四つの相手もまったく気にならない。左を差してくることがわかっているから、脇を差されて自分が不利になっても慌てることがない。実際、夏場所では左四つが絶対の稀勢の里(田子の浦部屋)、琴奨菊(佐渡ヶ嶽部屋)を相手に左を差されても力でねじ伏せてしまった。他の力士では考えられない発想と力に、3場所を抜く史上最速の大関2場所で、横綱へ駆け上がる可能性を感じてしまうのだ。

「すべては本人次第。自分がどれだけ努力するかにかかっている」と伊勢ヶ濱親方は言った。実際、才能ある力士も大関に昇進した途端にあぐらをかき、その地位に甘んじることが多い。しかし、照ノ富士は違う。部屋には尊敬する兄弟子、安美錦がいる。横綱・日馬富士がいる。何より横綱まで極めた師匠の指導は、大関に上がっても手を弛めることはなく、否応なしに精進を強いられる。その環境がさらに綱への道を近くするだろう。
 
 毎年、過酷な暑さが話題となる7月場所。今年は照ノ富士が、土俵の上を熱くする。

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