【月刊・白鵬】横綱もグッときた、千代の富士の「還暦土俵入り」

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ところが、翌12日目に私が豪栄道に土俵際で逆転負け。2敗目となって、優勝争いは再び混沌(こんとん)としてきました。さらに14日目、私が稀勢の里に敗れて3敗目を喫すると、3敗を守ってきた照ノ富士とトップで並び、横綱・日馬富士をはじめ、稀勢の里、平幕の高安、勢、魁聖、嘉風と、4敗の力士にまで優勝のチャンスが拡大。勝負の行方は千秋楽へと持ち込まれました。

 千秋楽では、4敗の平幕勢が次々に敗戦する中、照ノ富士は碧山戦をきっちりとモノにして、3敗を堅持。これで、結びの一番で私が日馬富士に勝てば、優勝決定戦となる状況でしたが、伊勢ヶ濱部屋の結束の固さは、予想以上でしたね。

 結びの一番、照ノ富士が所属する伊勢ヶ濱部屋の兄弟子である日馬富士は、とにかく渾身の力をしぼって私に挑んできました。「弟弟子の初優勝のために」という日馬富士の気迫が強く感じられました。結局、その勢いに押されてしまった私は、日馬富士に寄り倒しで負け。その瞬間、照ノ富士の初優勝が決まりました。

 場所後には、照ノ富士の大関昇進も決定。ワンチャンスをモノにできるあたりは、照ノ富士の"大物ぶり"を物語るものかもしれません。

 私の2度目の7連覇は夢と散りましたが、照ノ富士という若い力が本格化し台頭してきたことは、相撲界のことを考えれば、喜ばしいことだと思っています。受けて立つ横綱としては、またいい刺激になりますし、さらに鍛錬を重ねていきたいと思います。

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