【カーリング】屈辱からの再出発。近江谷杏菜の秘めた覚悟 (3ページ目)

  • 竹田聡一郎●文 text by Takeda Soichiro
  • photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

 そうして戻ってきた“世界の舞台”で、近江谷はいきなり輝きを見せた。

 世界選手権初戦、世界ランキング3位で今大会の覇者となったスイス戦では、96%というショット成功率を記録した。これは、初戦に出場した全選手の中で最も優れた数字で、難易度の高いウィック()も決めた。
※相手のガードストーンに当てて、相手ストーンの場所をずらすショット。リード(1番目の選手)が投げたハウス外のストーンは、当ててもいいが、アウトさせてはいけない。その分、精緻なショットが求められる。

 結局、試合には敗れたものの(3-5)、今季から務めるリードポジションの役割を存分に果たして、チームのゲーム構築に大きく貢献した。

 その後、日本は4連勝を飾るなど快進撃を見せたが、最終的には6勝5敗で予選リーグ6位。上位4チームが進める決勝トーナメント進出はならなかった。大会の中盤以降は、近江谷もショット成功率が低下し、ミスも目立つようになった。予選リーグ終了後、近江谷は自ら、大会を通してパフォーマンスを維持する体力、安定したショット、さらにアイスリーディング()を、今後の課題に挙げた。
※気温や使用状況などによって、刻一刻と変化するアイスの状態を読む技術。

 それでも、近江谷の新たな挑戦は始まったばかり。「再び五輪の舞台へ」という目標に向けては、まずまずのスタートを切ったと言える。もちろん、反省や課題はあるものの、「チーム加入1年目で世界選手権に出場できたことは大きかった」と言うように、彼女なりに得た収穫は少なくなったはずだ。加えて、北海道銀行加入後は「生まれて初めてのポジション」というリードを任され、自らのことを「最初に投げる人」と呼ぶなど、その役割に対する責任や自負は日に日に増しているようだ。近江谷が語る。

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