【月刊・白鵬】史上最多優勝を遂げた横綱が次に狙う「記録」 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 食事も美味しくて、大阪に来ると必ずいく店もあります。そのひとつが、宿舎の近くにあって、新弟子時代からお世話になっているスッポン屋さん。この場所の前にも、大好物のスッポン鍋をいただいてきました。その際には、「ああ、今年も大阪に戻ってきたんだな」という気分になって、「また、がんばろう!」という意欲が湧き上がりましたね。

 そうした大阪のいいムードに後押しされて、今場所前はいつもより積極的に出稽古にも出掛けました。逸ノ城(前頭筆頭)がいる湊部屋に行った日もありましたし、また別の日には初顔で対戦する前頭2枚目の佐田の海(境川部屋)とも稽古ができました。反対に、魁聖(前頭6枚目)ら友綱部屋勢が宮城野部屋に出稽古にやってきたりして、バリエーションに富んだ、充実した稽古ができましたね。

 こんなふうに、意欲的な稽古ができているのは、私に新しい目標ができたからだと思います。

 先の初場所(1月場所)で、私は史上最多の33度目の優勝を飾って、大目標だった大鵬関の優勝32回という記録を超えることができました。つまりこれからは、誰も歩んだことのない道が待っているわけです。

 その、何とも険しい道を前にして、思い浮かんだのは、父の姿でした。

 私の父は、モンゴル相撲の横綱を張っていました。モンゴル相撲の大きな舞台は、年に一度、7月に行なわれる『ナーダム』と呼ばれる大会で、父はそこで6回の優勝を遂げています。それは、本当に素晴らしい記録だと思います。

 実は、そんな尊敬して止まない父の記録を、次なる目標にしようと、思い立ったのです。6年間頂点に君臨し続けたということは、年に6場所ある大相撲に照らして単純計算すると、6×6で、36回優勝したことになります。その数字、36回の優勝を、私は次の目標に定めたのです。

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