【レスリング】吉田沙保里「お父さんに金メダルをかけてあげる」 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●構成 text by Miyazaki Toshiya  根本好伸●撮影 photo by Nemoto Yoshinobu

――そして、常に「攻めろ!」と。

吉田 はい。徹底的な「攻めのレスリング」です。たとえ勝った試合でも、攻めが足りなければ怒られましたし、逆に負けた試合でも攻めのレスリングができたら、「よしっ! よく攻めたな。次、がんばれ!」と褒めてくれて……。

――それが、吉田選手の原点ですね。

吉田 去年のアジア競技大会の初戦で、中国選手に5ポイントもリードされながら逆転できたのは、「私には誰にも負けないタックルがある。タックルならいつでも入れる。タックルで必ず逆転できる。焦るな、落ちつけ!」と自分に言い聞かせることができたから。

――誰にも負けない武器を持っている選手は強いですね。

吉田 自分のペースで試合を展開できるだけでなく、精神的な強さにもつながると思います。リオまで負けることなく、無敗のまま行ければ一番いいでしょうが、北京やロンドンのときのように五輪前に負けることがあるかもしれない。それでも私は、父のもとでレスリングを始めたころの原点に戻り、突き進むことができると思います。北京前やロンドン前の経験を生かして。そして、敗戦から学び、自分の武器であるタックルを磨きます。その過程は、高級時計を分解・掃除するように丁寧にひとつずつ……。

――すでに勝負師として悟られているようですね。

吉田 そんな立派なことではないですけど、「つまずいたとき、原点回帰できる人間は強い!」、「頼れる武器があれば、最後まで自分を信じられる」、「勝ち続けることで成長したのではなく、負けて強くなってきた」……ってこれ、今年1月に出版させていただいた私のエッセイ(『明日へのタックル!』集英社刊)に書いたことなんですけどね(笑)。

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