元祖・天才少女ジャンパー伊藤有希が再び開花するまで

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AP/AFLO

 2月20日にスウェーデンのファルンで行なわれた世界ノルディック選手権女子ノーマルヒル。1本目9位と不本意なジャンプをしながらも、2本目には93mを飛んでトップのお立ち台に立っていた髙梨沙羅(クラレ)が両手を叩いて喜んだのは、1本目4位の伊藤有希(土屋ホーム)が93mを飛んで自分の得点を上回った瞬間だった。

1位カリーナ・フォクト(中央)、2位伊藤有希(左)、3位ダニエラ・イラシュコ(右)1位カリーナ・フォクト(中央)、2位伊藤有希(左)、3位ダニエラ・イラシュコ(右)「メダル圏内に入ったと思ったから、感動し過ぎて涙が出て来ちゃいました。一緒に戦ってきたチームの仲間だし、私はずっと有希さんの背中を見てこの女子ジャンプで育って来たので......。私が初めて海外遠征に行った時もわからないことをすごく丁寧に教えてくれたので、本当にすごいお姉さんです」

 その後は、1本目2位でソチ五輪女王のカリーナ・フォクト(ドイツ)に92mを飛ばれて1.8点差だけ上回られたが、最終ジャンパーのダニエラ・イラシュコ(オーストリア)は2本目8位の89mに止まり3位に。伊藤の2位と髙梨の4位が確定した。

 所属する土屋ホームの監督でもある葛西紀明は「今日は飛ぶ前からメダルを獲りそうな予感がしてウルウルしていたんです。1本目のジャンプは上にある選手キャビンのテレビで見ていたけど、2本目は『メダルは確実だな』と思ってブレーキングトラックまで降りてきたんです。コーチのヤンネ・バータイネンが2本目は完璧なジャンプだったと言っていましたね。メダルが確定した瞬間にガッツポーズをしたら、涙がボロボロ落ちてきました」と苦笑する。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る