【大相撲】「日本人横綱」誕生の可能性を秘める4人の逸材 (3ページ目)

  • 福留崇広●文・写真 text&photo by Fukutome Takahiro

 幕内では、抜群の人気を誇る遠藤(追手風部屋)にも綱への可能性を見い出したい。昨年の初場所で11勝4敗と好成績で敢闘賞を獲得し、一気に「年内に大関か」と期待が高まった。しかし、番付を東前頭筆頭まで上げた3月場所で、初の上位戦で6勝9敗と負け越し。5月場所も横綱・鶴竜から初の金星を獲得するも、負け越して上位の壁にはね返された。

 9月場所では3勝12敗と大負けを経験。「立ち合いの当たりがまったくない。まだまだアマチュア」と元横綱・千代の富士の九重親方が指摘するように、相撲のうまさは平幕には通じても、立ち合いからの圧力不足で横綱はもちろん、大関、三役陣にはまったく歯が立たない状況が続いている。

 体重は150kgを超えて体は大きくなったが、肝心の馬力と圧力が不足している。それを身につけるためには「上位に胸を借りて自分を追い込む稽古をしないといけない」と北の湖理事長。積極的な出稽古で横綱、大関の胸を借りることなくして、横綱はおろか、三役昇進も見えてこないだろう。

 抜群の人気は、数多くのファンが寄せる将来の横綱への期待とも言える。その声に応えるためにも、稽古の方法を見直して上を目指して欲しい。巡業、普段の稽古で「遠藤が白鵬の胸を借りた」という報道が多くなれば、昨年、苦しんだ上位の壁を突破し、横綱への道が開けてくるはずだ。

 将来の日本人横綱という視点で番付を広げると、十両に注目力士がいる。20歳の輝(かがやき/高田川部屋)だ。新十両の先場所で、千秋楽まで優勝を争う10勝5敗の好成績を収めた。出身は石川県七尾市。父方の遠縁は同郷の第54代横綱・輪島という経歴を持ち、中学横綱の実力をひっさげ高田川部屋に入門。2010年3月場所で初土俵を踏んだ。体格も193cm、144kgと 白鵬に匹敵する大型力士で、入門時は将来の日本人横綱と、テレビ、新聞、雑誌にも大きく取り上げられた。ただ、現実は厳しく、9場所で幕下昇進もそこから3年間、幕下で足踏みが続いた。

 苦しい日々にも師匠の元関脇・安芸乃島の高田川親方は過酷な稽古を課した。現役時代は元大関・貴ノ花の一番弟子として、藤島部屋の鬼の猛稽古に耐えてきた親方。連日、50番以上の申し合い、しこや鉄砲をそれぞれ1000回と、今の相撲部屋では随一と言っていい質と量の稽古を課して、指導してきた。

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