【大相撲】人気回復の影に、相撲協会女性職員の奮闘あり! (3ページ目)

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • 織田桂子 ●写真 photo by Oda Keiko

 今年の11月にはフォロワーが遂に6万人を突破し、今では「ツイッターから相撲に興味を持ち、見に行くようになりました」という新たなファンを獲得。さらに「〇万人突破」という節目には、抽選で応募したファンと力士がふれあうイベントを開催している。6万人突破の時は38歳のベテラン、十両・若の里が先生となる相撲史の講演を企画した。抽選で集まった170人のファンを前に、力士自身が経験談を踏まえた相撲の歴史について講義した。波及効果も抜群で、ニコニコ動画生放送では約2万人が視聴するなど、新たなファン層拡大に貢献している。

 加藤さんのアイデアは、ツイッターだけではない。東京場所のチケット販売もそうだ。昨年まで券売で伸び悩みが顕著だったのが平日の4人マスB席(1人10600円)と4人マスC席(同9500円)。そこで企画したのが特典付きチケットだった。

 昨年秋にマスB席に相撲部屋の朝稽古見学、貴乃花親方と記念撮影ができるチケットを付けて販売。また、“和装day”と題し和服で来場した観客には、先着で手ぬぐいなどをプレゼントするサービスも始めた。斬新な企画のチケットは、多くの媒体が取り上げるなど話題も呼び、売り上げが落ち込んでいたマスBとマスCは、今年の秋場所では1年前と比べ、2倍、3倍の売り上げを記録した。
 
 加藤さんは言う。「これまでは観戦者の30%が60代以上の方々。もっと30代前後の方々にも見に来ていただきたい。そのためには、相撲を見るだけという“受動的な”観戦ではなく、来てくれた方々が親方と触れ合えるなど、お客さまが自ら動いて参加できる“能動的な”観戦方法にしていきたいんです。国技館に行けば何かおもしろいよっていうことが、口コミで広まればうれしいです」。

 イメージは国技館のテーマパーク化だ。相撲を見るだけでなくファンがさらに楽しめるように、昨年夏場所には元小結・高見盛の振分親方が来場者とハイタッチする企画を実施した。また、人気の遠藤が女性ファンをお姫様抱っこする企画は大きな話題に。あまりの人気に抱っこしている写真を記念撮影用のパネル(1ページ目写真参照)にしたほど。本場所中は今でもそこに行列ができている。

 今後もLINEスタンプを製作したり、初場所では館内にガチャガチャも設置するなど、新たな企画が次々と控えている。

 相撲人気回復の裏側には、斬新なアイデアを生み、行動している31歳の女性職員の存在があった。親方が絶対的な権力の以前の相撲協会なら、恐らく職員がアイデアを出しても通ることはなかったはず。それが劇的に変わった。加藤さんの奮闘は、オープンになった相撲協会の象徴と言える。

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