【バドミントン】20歳の桃田賢斗が語る東京五輪への思い (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Sportiva

 高校卒業後は実業団のNTT東日本に進んだ。

「実業団に入ってシニアの試合へ出てみると、レベルの違いを実感させられました。パワーとスタミナ、スピード、経験値などのすべてが違って本当に別次元な感じで。世界ジュニアの優勝で満足していたところもあったけど、このままじゃいけないなと思って」

 ジュニアの頃はコンディション作りを考えたことがなかったが、シニアでは睡眠時間や食事にも気を使い、ベストな状態に持っていかなければ戦うこともできないと実感した。

 また、NTT東日本でチームメイトになった全日本総合6連覇の田児賢一がストイックに練習に打ち込んでいる姿を間近でみて、「才能の塊のような人だけど、あのプレイを作り上げられたのは練習でフィジカルを鍛えたから。自分はもっともっと練習をしなければいけない」と思えたのも大きい。

「スーパーシリーズ()でたまにベスト8やベスト4には入れているけど、まだ手応えはないし特別自分が強くなったというわけでもないと思います。ただ、少しずつ変わってきていると思うのは、意識的に練習しているフィジカル面が徐々に強化されてきて、スーパーシリーズという舞台での戦い方が分かり始めたということですね。今年3月の全英オープンでは世界ランキング1位のリー・チョンウェイ(マレーシア)と戦ったけど、コートが狭く見えて打つコースが無くなるくらいの雰囲気に圧倒されました。彼は何発打ち続けてもショットの精度が変わらないけど、そこまでできるようにするためには体の強さが重要だと思いました」
※世界を転戦する年間バドミントントーナメントシリーズ。オリンピックや世界選手権に次ぐ大会

 シニアになった時からネット前の技術や器用さには自信があった。だが戦いを重ねていくうちに、それだけでは戦えない、テクニックを生かすためにもフィジカルが必要だと考えた。今は世界ランキングを12位(11月6日現在)まであげているが、「意識的にコツコツ練習してきたことが、少しずつ実力になってきているのでは。これからもいきなり強くなることはないので、コツコツ練習していくしかないと思う」と言う。

 だがそんな桃田は2020年東京五輪を、自分のための五輪とも思えると言う。

「自分が世界ジュニアで優勝したのは千葉県で、たまたま日本開催だったんです。だから25歳で迎える五輪が東京になったのは、ちょっと何かあるんじゃないかな、と思って」と笑顔を見せる。

「東京で金メダルを獲るために何をしなければいけないかはまだ分からないけど、まずはリオデジャネイロ五輪に出たいしスーパーシリーズでも1回くらいは優勝したいから、本当にちょっとずつの積み重ねで結果を残していくしかないですね。でも、まだ結果にこだわるようなレベルにはきていないから、今は上を見ずに足元をみて、コツコツと頑張らなければいけないと思います」

 一気に花開いたように見える桃田だが、2年後のリオ五輪、6年後の東京五輪に向けて、今はまだ、着実に一歩ずつ階段を上ろうとしている。

【プロフィール】
桃田賢斗(ももた けんと)
1994年9月1日(20歳)香川県出身。NTT東日本所属。高校3年生で出場した世界ジュニア選手権で優勝。2014年5月に行なわれたトマス杯ではシングルスで5勝をあげ、チームの初優勝に貢献した。

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