【新体操】山﨑浩子が語る「フェアリージャパンの育て方」 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

 とはいえ、15~16歳の女子高生を親もとから離し、掃除から食事、洗濯など身の回りのことをすべて自分たちでやらせる共同生活には、当初、多くの苦労があったという。それでも、2008年からは国立スポーツ科学センター(東京都北区)に新体操の練習場ができ、隣接する「アスリートビレッジ」に選手たちの住まいを移したことで、より良い環境で練習に集中できるようになった。

 そして改革は、ついに結果となって表れる。2007年の世界選手権で7位に食い込み、2大会ぶりにオリンピックへの出場権を手に入れたのだ。

「(北京五輪での)結果は10位に終わりましたが、力がついてきたと認めてくださる方も多くなりました。そして翌年(2009年)、三重で行なわれた世界選手権では、種目別リボンロープで過去最高順位タイの4位に入って、このままの方向でやっていこうということになったんです」

 そして2010年――。ロンドン五輪に向けて新たなメンバーを選考する際、山﨑氏は、「強豪国の新体操に触れたほうがいい」と思い、さらなる一手を打つ。ロシア人コーチのインナ・ビストロヴァ氏がいるサンクトペテルブルクで、長期間の合宿を行なうようにしたのだ。

「ロシアに行ってから、かかとの上がり方や四肢の使い方、動きと動きのつなぎなどが良くなり、美しさは断然上がりました。また、恥ずかしがらないようにもなりましたね」

 継続的な強化の甲斐もあって、ロンドン五輪では7位に入賞。現在もフェアリージャパンは、1年の半分ほどをロシアに滞在して練習を積んでいる。ただ、それでも日本と世界のトップには、まだ差があることは否めない。そこで2016年のリオデジャネイロ五輪、2020年の東京五輪に向けて、どんな育成・強化をしていくのか聞いてみた。

「2020年大会の強化本部長を私がやるかは決まっていませんが、準備はしておかないといけません。ロンドン五輪までは、オリンピックをひと区切りと考え、ある程度メンバーを固定していました。ただ、それだけでは勝てない。どんどん良い選手をチームに入れて刺激を与え、足りないと思ったことは選手たち自らがやっていくことも必要だと感じています」

 今後、山﨑氏は新たに選手をトライアウトで発掘しつつ、現メンバーと競わせながら強化を進めていく方針だ。また、選手たちを『特A』『A』『B』というようにランク分けし、さらなる成長を促(うなが)すという。そのためには当然、日本代表につながるジュニアの選手層を厚くすることが欠かせないと語る。

「今までは、日本代表が『育成の場』にもなっていましたが、今後は『強化の場』にしないとダメです。そのためには、小・中学生のレベルを上げていかければ。やはり、手具(リボン、ボール、クラブ、フープ、ロープ)をちゃんとしたところに投げられるなど、基本が改善されていかないと、複雑な連携はできませんから」

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