【体操】50年前の「ゆか金メダリスト」を今、採点すると? (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi photo by Getty Images

「しかし、昨年に開いた女子チームの審判講習会では、1968年のチャフラフスカさんのゆかの演技を、参考資料映像として使いました。音楽に合わせた動きをして観客に何を伝えたいのか、芸術的な表現も求めてはどうか……というメッセージを女子チームに送ってみたんです。ただ現状、それが点数に反映されるのかといえば、難しいでしょうね」

 ただ、採点方式の歴史は、今も変化し続けている。今年10月の世界選手権・男子団体で完璧な演技をした日本が、難度の高い構成ながらミスもあった中国に0・1点差で敗れたことで、「これはおかしいのでは?」という声も上がってきたという。

「演技の出来栄えを示すEスコアを見たとき、世界選手権の個人総合では、2年続けて内村航平が最高得点をマークしました。まさに、『きれいな体操をする』という彼の真骨頂でしょう。しかし、今年の世界選手権では、種目別のつり輪と平行棒で田中佑典がEスコアの最高点を出しているのです。それまでは内村ひとりが突出していましたが、他の日本人選手もそれに追随してきました。そういう評価が世界で高まり、彼らの発しているメッセージ(きれいな体操)が伝わるようになれば、体操の採点ルールも少しずつ変わっていくかもしれません」

 採点競技は常に、時代が要求するものによって変わっていくものだ。内村航平や白井健三が見せている最高の演技は、50年後、一般大衆の目にどのような形で写っているのだろうか。

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