フェンシング界に勢いを取り戻す「金メダル獲得」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Tsukida Jun

 太田はまず最初に4点を連取し、馬に2点取られながらも、そこからまた3点連取。そして馬に2点連取されたあと1点を取られると、次の対戦に交代という土壇場のところでさらに4点を連取して一度は同点に。最後は1点を取られたが1点差に迫った。

 それで勢いを得た三宅は、再び同点に追いつく場面を見せて場内を沸かせ、1点差を死守。続く千田は3点連取されて、万事休すかと思われたが、そこから6点を連取して40対38とリードして再び太田につないだ。一度は4点差まで広げた差を詰められる場面もあったが、最後まで落ち着いて戦い、45対42でアジア大会団体初優勝を果たした。

「これまで中国相手に10点差をつけられた試合は、惜しいところまでいったことはあるけど勝ったことは無かった。非常に難しい展開で10点以上開いて、そこから中国に勝つのは100回に1回あるくらい。その1回が今日来たと思う。(千田)健太と三宅が粘って少しずつ点差を詰めてくれて自分のところに回ってきたが、みんなが自分のマイナスだったところを補てんしようとしていたところが良かった。この苦しい試合をものに出来たことは嬉しいし、最近は選手の中にヨーロッパ勢には敵わないという様な意識が少し出てるような気がしていたけど、これでみんな自信を持てると思う」と太田は話す。

 また三宅も「何度かで諦めかけたが、何とか気持ちをつなげられた」といい、千田も「最初は勝ちを意識し過ぎてポイントを奪われてしまった。ロンドン五輪以降は団体戦で結果を出せていなかったが、こういう大きな舞台で韓国を倒して中国に逆転勝ちをしたので、チームとしての手応えをつかめた」と話す。

 来年の4月から始まる五輪出場レースでは、ロシアとイタリア、アメリカ、中国、フランスあたりが強力なライバルになるだろうと太田はいう。目標はそのライバルの中に割り込んで4位以内での出場権獲得だ。

「やっぱり団体が出場権を取って複数の選手で行かなければ個人のメダル獲得も難しい。4人でリオデジャネイロ五輪へ行かなければいけない」と太田は話す。日本フェンシング男子フルーレチームの牽引者に、ようやく気迫が戻ってきた。

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