【月刊・白鵬】一気に頭角を現した、新横綱・鶴竜の「正体」 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 しかし実際には、最初に抜け出したのは、日馬富士でした。そして、鶴竜が続くわけですが、それはかなり意外なことでした。

 というのも、鶴竜はそれなりの成績は残していたけれども、それほど目立つ存在ではなかったからです。鶴竜とは幾度となく相撲を取ってきましたが、「鶴竜はどうして強いのか?」と問われても、正直、その答えを搾(しぼ)り出すことには苦労していました。

 そんな鶴竜が一変したのは、昨年からです。トレーニング方法を見直したことで、体が大きくなって、一気に力をつけてきました。それが、今年の初場所(1月場所)、春場所で挙げた14勝という勝ち星につながったのだと思います。

 特に最近は体のバランスが整っていて、相撲がとても安定しています。また、緊張感が顔に出ないのもいいですね。心のトレーニングがしっかりできているのでしょう。その辺は本当に素晴らしいと思います。

 そういえば、「雲竜型」の土俵入りを鶴竜に指導したのは、貴乃花親方(第65代横綱・貴乃花)とうかがいました。もしかすると鶴竜は、相撲でも現役時代の貴乃花親方のスタイルを目指しているのかもしれません。どんなときでも表情が変わらず、相撲に対して真摯なところなど、私にはふたりの共通する部分が見えるような気がします。

 ともあれ、ひとり横綱から今や3人の横綱となりました。だからといって、横綱としての責任は、何ら変わりません。ひとりだろうと、3人だろうと気持ちが緩むことはありません。当然、3横綱を中心に毎場所、優勝争いをしていかなければいけないと思っています。優勝をひとりで独占し続けることは難しくなるでしょうが、これからもひと場所、ひと場所、全力で戦っていきたいと思います。

 特に今場所にかける思いには、強いものがあります。それは私が幕内力士になって、ちょうど10年目となるからです。そんな節目の場所ですから、なんとかいい結果を残したいと思っています。

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