2014.04.24

【月刊・白鵬】横綱に多大な影響を与えた、ふたりの「引退力士」

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 そしてもうひとつ、私の、一瞬腰を下げて相手のまわしを取るという、現在の立ち合いを確立させたのも、実は雅山関との対戦のときでした。その一番は、初優勝を飾った2場所前の初場所(2006年1月場所)10日目のこと。「確立させた」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、その際に自分なりに「これだ!」という立ち合いの感覚を見出せたのです。

 このとき、私は関脇でしたが、この雅山関との一番でいいイメージを描けたことが、大関の座につながったと言っても過言ではありません。

 また、雅山関はいいこと、悪いことをはっきりと口にして、後輩力士に対して注意を与えてくれる貴重な存在でもありました。力士たちの統制がとれるのも、相撲界の伝統やルールを厳しく説く先輩力士がいてこそ。雅山関にはもう少し現役力士として、力士全体ににらみを利かせていてほしかったな、という思いもあります。

 雅山関の断髪式では、私も力士会を代表して、鋏(はさみ)を入れさせていただきました。きめ細かな心配りができる方ですから、今後は指導者としてご活躍されることでしょう。

 こうした“別れ”もあれば、もちろん“出会い”もあります。私の所属する宮城野部屋にも、今年に入って続々と新弟子たちが入ってきました。

 春場所では、この春中学校を卒業した4人が初土俵を踏みました。弱冠15歳で、体の線も細く、まだまだこれから、という子たちです。それでも皆、希望に満ちあふれていて、彼らの姿を見ていると、同じように15歳で日本の相撲界に入ってきた昔の自分のことを思い出したりもしましたね。

 一時は減少傾向にあった新弟子も、最近は増えてきました。春場所で初土俵を踏んだのは、全体で50人近くいました。そのうえ、新星の遠藤や大砂嵐が脚光を浴びて、新横綱・鶴竜が誕生しました。近頃、大相撲の人気が復活してきていることを肌で感じています。私も、まだまだがんばらなければいけません。

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