髙梨沙羅のチームスタッフが語った「ソチでの異変」 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text y Ishizuka Takashi
  • photo by Enomoto Asami/JMPA、Kouchi Shinji

髙梨沙羅の食事面のサポートをする栄養士の細野恵美氏。髙梨沙羅の食事面のサポートをする栄養士の細野恵美氏。 ボルシチとはテーブルビートという野菜を材料に使ったロシア名物の煮込みスープである。

「選手村では食べられなかったということで、レストランに行き、ボルシチを注文しました。彼女はスープを一口飲むと、『すっごく美味しい』と、こぼれ出るように言ったんです。ソチに行って初めて聞いた、心から『美味しい』という一言。その言葉を聞いて、本当につらかったんだろうなって、切ない気持ちになりました。選手村の料理にワクワクすることもなければ、ロシア料理を楽しむこともできない。彼女はただ競技と向き合い過ごしていたんだなって……。世界ジュニアやW杯と違い、五輪は選手村のセキュリティーがものすごく厳しく、選手たちと簡単に接することができませんでした。もうちょっとサポートできたらなと思うと、やりきれない気持ちになりましたね」

 楽しむということをまったく考えず、小さな体に背負いきれないほどの期待を背負っていた髙梨は、競技の翌日、ボルシチを口にした時に、初めてソチにいることに気づいたのかもしれない。

「メダルを獲れれば良かったのかもしれませんが、それがすべてだとは思いません。各地を転戦しコンスタントに勝ち続けるW杯総合優勝のほうが価値はあるはずだし、そこを褒めてあげてほしい。今回の五輪は彼女にとって通過点。私たちも更なるサポートをしていきたいと思います」(牧野氏)

 牧野氏と細野氏によれば、髙梨はまだまだ能力が伸びる余地を残しているという。4年後に平昌(ピョンチャン)五輪へ向かい、髙梨はすでに練習を再開している。

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