【アイスホッケー】嗚呼、スマイルジャパンの夢を奪った「幻のゴール」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva photo by JMPA

 そして第1ピリオドの残り2分を切った18分すぎ、ついに日本はチャンスを掴み取る。カウンターから攻め込んだFW足立友里恵がシュート。こぼれ球をFW浮田留衣が押し込むと、ゴール前の混戦で倒れたロシアGKプルゴバの身体の下に入ったパックは、ゴールに入ったかのように見えた。しかしその直後、ロシアの選手がパックを掻き出し、ゲームは続行となった。

 これに対し、日本は猛抗議。会場のリプレー映像ではインゴールしているとしか思えず、日本は線審も交えて協議した。だが......、ドイツ人のニコル・ハートリック主審の判定は、「ノーゴール」。ビデオ判定もなく、日本のゴールが認められることはなかった。

 アイスホッケーの公式ルールでは、「得点に関する最終決定は主審が下すもの」となっている。ビデオ判定は、主審か、各ゴール後方に配置された2名のゴールジャッジが競技役員に要請した場合に行なわれる。スマイルジャパンを率いる飯塚祐司監督は、ビデオ判定を行なうよう訴えるも、ドイツ人の主審も、ふたりのゴールジャッジ(チェコ人とアメリカ人)も要請に動くことはなかった。

 1点のビハインドのまま迎えた第2ピリオドは、ロシアの猛攻に耐え忍ぶ展開となった。地元の声援を受けて、ロシアは積極的にシュートを連発。日本はGK藤本那菜の好セーブによって、何とか点差を広げられることなく、第3ピリオドまで持ち込んだ。

 そして迎えた最終ピリオド。日本はついにロシアの壁をこじ開けた。開始33秒、FW平野由佳のアシストを受けたDF床亜矢可が、右サイドから浮き球のロングシュートを放って同点に追いついたのである。その後も日本は逆転を狙うべく、豊富な運動量で主導権を掌握。リンクを縦横無尽に動き回り、ロシアを完全に翻弄した。

 しかし、勝利の女神が日本に微笑むことはなかった。11分36秒、パワープレイでロシアに攻め込んだ後の隙をつかれ、カウンターで決勝点を奪われてしまうことに。その結果、日本は予選リーグで2連敗を喫し、決勝トーナメントへの道は消滅した。疑惑のノーゴールについて、飯塚監督は試合後、「レフェリーに事情説明を求めたが、ビデオ判定まではいかなかった。ルール上、ノーゴールは仕方ない」とコメント。冷静に試合を振り返りつつも、表情には悔しさが滲(にじ)んでいた。

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