【スピードスケート】男子500mで完敗した日本が考えるべき「今後の強化策」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Noto Sunao/JMPA

 今村俊明コーチは、「去年ここでやった世界距離別選手権をみて、34秒7台を揃えればメダル、金のためには34秒6台が必要だと考えていました。でも一本目にスメーケンスが34秒5を出した時には『金メダルは厳しい』と思いましたね。今年のオランダの代表選考会では34秒3台という平地のリンクでは想像できなかったような記録が出ていてビックリしたけど、オランダ勢はその力をソチで再現したのだと思います。長島の1本目と加藤の2本目はそれぞれの力を確実に出したけど、それぞれもう一本でミスをしたのも実力だと思います」と完敗を認めた。

 以前からオランダはスケート王国だったが、中心は中・長距離で短距離は弱かった。だがスラップスケートで滑る技術を熟練させてきた今は、500mでも優れた身体能力を存分に生かせるようになったのだろう。昨シーズンはシメーケンスがW杯総合1位になり、今季も2位のミヘルを筆頭に5位、8位、12位をオランダ勢が占めている。

 日本の男子で唯一世界に通用している500mでも厳しくなっている状況。それを見て15位に止まった及川佑は、「もっともっと強くなるためにはどうするべきか、日本スケート界全体で考えなければいけないと思う」と話す。

 ミヘル・ムルダーはインラインスケートの世界選手権で優勝経験を持つ選手だ。またトリノ五輪とバンクーバー五輪の1000mを連覇したシャニー・デービス(アメリカ)はショートトラックから転向した選手。さらにバンクーバー五輪の1万mで優勝して5000mでは2位になった李承勲(リ・シンフン/韓国)はショートトラックとロングトラックを並行して行ない、ショートの五輪選考で落選したためにロングに挑戦して出場してきた選手だ。

 インラインスケートもショートトラックも、北国だけの競技ではない。その意味では日本スケート界も、”スケートは寒い地方の競技”という認識にとらわれることなく視野を広く持つべきだろう。

 今回の敗戦を、そんな意識変革のきっかけにして欲しいものだ。

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