「大本命」髙梨沙羅がソチで金メダルを争う「対抗馬」は誰か? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Getty Images

 彼女は99年に女子ジャンプ初の国際大会"レディースグランドツアー"が開催されて以来トップに君臨し続けている選手で、11年の世界選手権優勝者でもある。今年30歳だが、女子ジャンプという競技の成長を牽引してきた選手だけに、初の五輪に対する思い入れも強いはずだ。今の状況で、髙梨とヘンドリクソンの争いに割って入れる可能性があるのは彼女だけだろう。

 イラシュコは、11年の世界選手権で、スタートゲートからジャンプ台の先端が見えないほどの濃霧のなか試合を制した選手。悪条件の試合になればなるほど、これまでの経験を活かせる強みがあるだけに、髙梨にとって警戒すべき相手となる。

 それでも髙梨の力が図抜けている現状を考えると、ソチで髙梨が金メダルをとる確率はかなり高い。最大のポイントは、1月中旬からジャンプ練習を始めたヘンドリクソンがどこまで状態を戻してくるかになるはずだ。

 ヘンドリクソンのすごさは、ヒルサイズを超える大ジャンプでも、テレマークを入れたきれいな着地ができることだ。昨年2月20日から3月3日に開催された世界選手権でも「それが当然」とでもいうように、美しいテレマークを入れていた。彼女の場合、女子選手のなかでは大柄なため、前後に広げる足の幅も広く、その美しさも増す。

 ヘンドリクソンは、髙梨が「完璧なジャンプをする」と憧れている選手でもある。ジャンプ台にしっかり力を伝えて立ち上がり、無駄な動きを一切しないで素早く空中姿勢を完成できる技術があるのは、女子では髙梨とヘンドリクソンのふたりだけといっていい。

 髙梨は、昨シーズン、ヘンドリクソンとの直接対決となったW杯の2戦でも飛型点の差で敗れていた。そのため髙梨は、昨年の春から筋力トレーニングを重ねることで、テレマーク着地の課題克服に取り組んできたのだ。ヘンドリクソンがいたからこそ、髙梨もさらなる進化を求め続けたといえる。

 髙梨自身、「五輪の大舞台で憧れのヘンドリクソンと勝負をしたい」という気持ちが強い。自分が必死に取り組んできたトレーニングの成果は、ヘンドリクソンと勝負してこそ証明されると考えているからだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る