【カーリング】ソチ五輪で躍進なるか。カーママが手にした「武器」 (3ページ目)

  • 竹田聡一郎●文 text&photo by Takeda Soichiro

 初戦で韓国に勝てば、上位進出の可能性も見えてくる。2002年ソルトレークシティ五輪、2006年トリノ五輪の日本女子代表コーチで、今回も代表チームのコーチを務めるフジ・ミキ氏は、その手応えもあるという。それも、小笠原、船山というふたりの成長を感じ取っているからだ。

「ふたりに始めて会ったのは、2001年。まだ、20代の女の子でした。あれから10年の時が経ち、彼女たちは結婚し、出産をして、人間的な『maturity(成熟)』が増したと思います。それは、30代にならないとなかなか得ることができないもので、他者とのコミュニケーションを円滑にさせたり、アイスの上でも生かされたりしています。さらに、札幌には立派な施設ができて、毎日ハードな練習を繰り返すことができた。その結果、体力、特に体幹と足腰が強くなった。彼女たちは選手としていちばんいい時期、充実期を迎えつつあります。プレッシャーを克服できれば、いい試合ができると思います」

 ソチ五輪開幕を前にして、札幌市内で開催された壮行会では、小笠原は晴れやかにこう語った。

「全勝するか、全敗するか、どっちかなんじゃないかな、と思っている」

 小笠原に続いて、23年来の相棒である船山は力強い決意を述べた。

「オリンピックの舞台で、堂々と、冷静に、そして貪欲に戦いながら、攻めるところは攻めにいって勝ちたい」

 世界で10番目に手にした五輪切符。確かに下馬評は低いかもしれない。しかし、アイスの状態次第で何が起こるかわからないのがカーリング。第一、6年のブランクがありながらも、小笠原と船山はそのハンデを克服した。そして、奇跡的な復活を遂げて、五輪の舞台に帰ってきた。小笠原が言う。

「私たちのプレイが、働く母親や同年代の女性にどれだけ勇気や感動を与えることができるかわからないけれども、そういう方々の“代表”だ、という気持ちを持ってソチ五輪で戦ってきたいと思います」

 経験を重ね、「カーママ」となって“成熟”した小笠原と船山。彼女たちの3度目の挑戦がまもなく始まる。

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