ソチ五輪メダル候補の15歳。
平野歩夢がスノーボードの未来を変える

  • 徳原海●文 text by Kokuhara Kai photo by AFLO

 優勝したのは、あのショーン・ホワイト。アメリカ人のハートを鷲づかみにするには、十分すぎるインパクトだった。「僕が初めてX GAMESに出たときは、ひざがガクガク震えた。今夜の平野のパフォーマンスは信じられない。ここから数年、彼が活躍するのは間違いない」。そう驚きを表現したショーンの言葉どおり、平野はその後もヨーロピアンオープン優勝、そしてUSオープン2位と、ビッグマッチで快進撃を続けた。

 さて、ここで彼が主戦場としているハーフパイプについて、あらためて触れておこう。1998年の長野五輪から正式種目となったスノーボードのフリースタイル競技のひとつで、大まかに説明すると、全長120~130メートル、深さ3~5メートルほど(大会によって異なる)の半円筒状コースを振り子のように往復しながら、ジャンプやトリックを5~6回繰り出し、技の難易度や回転数、ジャンプの高さなどを競う採点競技だ。前述のとおり、五輪はアメリカのショーン・ホワイトが2連覇中で、その絶対王者の牙城を、誰が、いかにして崩すのか、というところがソチ五輪を楽しむ上でのポイントのひとつとなっている。

 しかしながら、最高難易度の回転系の大技をバシバシとルーティーンに加えてくる海外ライダーたちと比べ、平野のライディングには少々、質の違う魅力がある。もちろん、彼らにひけをとらないダイナミックな大技は持っているが、それを凌駕して余りある圧倒的なエアの高さ、そして着地も含めたパイプ内での完成度の高い滑走が世界で評価されている。特に、平野のジャンプは圧巻だ。まるでパイプとボードがくっついているかのようなスムースな滑りから一直線にテイクオフされるジャンプは、惚れ惚れするほど美しく、それでいてスノーボード本来の魅力である「浮遊感」、「優雅さ」に満ちている。ソチ五輪は、日本全国にそのライディングを披露する絶好の機会になるだろう。

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