【スピードスケート】小平奈緒、ソチ五輪に向かって加速中! (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 スタートからの動きは以前より遅く見えたが、100mの通過タイムは前年10秒6台だったものが10秒54を出すまでになっていた。そして前年は38秒28だったゴールタイムも、国内最高記録の38秒05が出た。さらに12月のW杯長野大会初日には100mを10秒51で通過し、37秒96で2位に入った。

 結城コーチは「あれはスタートからの一歩一歩の力が、すごく氷に伝わるようになった成果です。彼女の場合はグググッと加速して行き、100mを過ぎてからもさらに伸び続けてゴールするというのが持ち味だから、その中で今後、100m通過が10秒5前半とか、10秒4、10秒3になってくればいいと思いますね」と話す。

「昨季はそんな感じだったから、シーズン後半戦に結びついてくるという感覚があったんです。でも1月の世界スプリントの第2カーブの出口のところで転倒してしまって......。あの時の300m通過は確実に日本記録を上回るもので、滑りというよりスケート靴がスピードに耐えきれなくて転倒したんです。その精神的ダメージが後遺症としてシーズンの最後まで響いてしまった感じでしたね」

 五輪シーズンの今季は、昨季よりもパワーアップさせるとともに、体重自体も3kgほど増加させてシーズンインした。そのくらいでいけばシーズンが深まるにつれて自然と体重が落ち、2月にはベストの状態になるという考えからだ。

 それでも10月16日の長野エムウエーブの記録会では、製氷の状態が試合の時ほど完璧ではない状態のなかで、100mを10秒52で通過すると37秒87の国内最高記録で500mを滑った。

 その1週間後の全日本距離別では疲労もあって記録更新こそならなかったが、37秒台を連発。さらに1000mでは1分15秒91の国内最高記録をマークして進化の証を見せたのだ。

「スケートの場合は下半身が重要だけど、その強さを発揮するためには上半身が安定してなければいけない。その意味では下半身と上半身という風に分けるのではなく、全身でひとつの蹴りを作るというような感覚が彼女の中に出来ていると思います。左足で氷を押す時には、右側の体幹や背中がグーッと伸びるという連動性が彼女の中で芽生えてきている。それはトレーニングの時から同じ感覚で、これまでウエイト、上半身、スケートと分けているような意識だったものが、今は全部一緒になっていると思うんです」

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