髙梨沙羅、ソチ五輪ジャンプ台への対策に自信

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 そして2本目にはひとり前で飛んだ伊藤が、いい踏み切りをしながらも横からの突風に叩かれて81mに止まると、その時点でトップに立っていたコリン・マテル(フランス)との点差を考えて安全圏だと判断した小川孝博チーフコーチはゲートを1段下げた。横風もある難しい条件だったが、91mに着地。2本目に限れば、93mを飛んだリンゼイ・バン(アメリカ)に0.2点差及ばない2位だったが、合計ではマテルに27.3点差をつけて圧勝。W杯勝利記録を15に伸ばした。

 しかし「2本目のジャンプはイメージしていた距離より短かった。自分では何が影響したかわからない」と、高梨は不満気な表情をみせた。

 昨季まではゲートを下げれば、ゲートファクターで1mにつき6点の加点をもらえていたが、今季からはコーチリクエストでゲートを下げた場合、ヒルサイズの95%の距離を飛ばなければ加点はもらえないルールに変更されている。高梨の場合は前日の2本目もそうだったが、ヒルサイズ100mの宮の森で95mに届かなかったため、加点をもらえなかったのだ。

 それも小川コーチが高梨の安全を優先したからこそ。勝てる状況なら無理をさせる必要はないと判断した。ソチ五輪までの課題も「敵はケガと体調管理だけ」と言い切る。また高梨も「見ている方からすればより飛んだ方が楽しいと思うから飛距離を出したいが、体のことを考えると飛び過ぎるのは危ないので」と話した。

 小川コーチがそこまで自信を持つ理由は、今季W杯7戦6勝という強さと昨シーズンまで課題にしていたテレマークを強く意識出来るようになっただけではない。ジャンプ台への対応も「去年までは失敗ジャンプをすると『何でだろう』と悩んでいたが、今年は建て直すのが早くなった」と彼女の成長を認めているからだ。

 昨季は難しいジャンプ台であるリュブノ大会(スロベニア)でW杯総合優勝を決めたが、その直後の世界選手権では、プレダッツォ(イタリア)の緩やかな斜度のジャンプ台での公式練習1本目で失敗してしまった。そのモヤモヤを試合当日の試技まで引きずり、本番1本目のジャンプでやっと笑顔を取り戻していたほどだった。

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