好調・男子ジャンプ陣を支える。横川朝治HCの独自理論 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 クロスカントリーは難しいバランスで滑っていて使うエッジを状況に応じて変えるため、足の裏でしっかりと体重を乗せる中心を捉えていなければいけない。だがジャンプだけの選手の場合は、助走でフラットになった氷面を滑ることもあり、その中心を意識していない選手も多い。その意識を持っている者と持っていない者とでは、スキーの滑りも踏み切る時のジャンプ台への力の伝わり方も違うというのだ。

「長野五輪後は何人もヘッドコーチが変わったけど、僕はチームに(北野建設所属の)山田大起(2002年ソルトレークシティ五輪出場)や竹内(2010年バンクーバー五輪出場)がいたので、すべての時期にアシスタントコーチとしてW杯に行っているんです。立場的に選手とヘッドコーチの板挟みで両方の思いもわかったし、ルール変更もいろいろある時代だったから、そこでいろいろ聞いて学んだりして築いた人脈が今の情報源になっていると思いますね」

 05年からバンクーバー五輪までの6年間ヘッドコーチを務めたフィンランド人のカリ・ユリアンティラは、パワージャンプを日本チームに導入し、それを強引にやらせた。最初のうちは選手と軋轢があったが、横川はそれが今の日本チームの基礎を作ったといい、あれがなければズルズルいってしまっていたかもしれないという。

 だがバンクーバー五輪が終わって、ユリアンティラの後を継いでチームを率いるようになった時、アシスタントコーチになった宮平秀治(長野五輪代表、ソルトレークシティ五輪出場)と、体重当たりのパワーを見直した。一概にパワーとはいうが選手は体重も違い、計測の時の数値だけでは計れないのではないかと。その手法で見直すと、パワーが無いといわれていた伊東大貴がチームの中では体重当たりのパワーは最もあるほどだったというのだ。

「それを考えて思ったのは、これまでパワーアップをさせるトレーニングはしていたが、バランスを無視していたのでは、ということですね。同じ力を加えるにしても、ふらついている状態よりバランスをとってピンポイントのところで力を加えれば効率がいいはず。普通に生活するためのバランスはみんな持っているから、動いている中で体の中心を見つける力と、そこでブレずに押せる力を引き出そうと思ったんです」

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