【スピードスケート】妹を追いかけてきた姉、高木菜那が花開く (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Wataru NINOMIYA/PHOTO KISHIMOTO

 彼女を指導する今村俊明監督は、「今日の3000mは周りの調子が悪かったラッキーな優勝だけど、僕たちとしては昨日の1500mの方が期待していたんです。滑り自体は練習の方がいいし、まだ世界レベルからしたら下の方なのでこれから力をつけていかなければいけないが、今年の夏は苦しい練習も積極的にやるようになっていて、1年目や2年目よりも諦めない気持ちを継続できるようになったから、ひょっとしたら強くなるかなと思っていた」と表情を緩めた。

 その気持ちが強くなったひとつとして妹の存在がある。

 スケートだけでなく、趣味のダンスやサッカーもすべて自分が始めると、妹の美帆も続いて始めていた。いつも後ろについてきていたはずの妹が、スケートに関しては先に頭角を現し、五輪出場まで先に果たしてしまった。

「高校の時はすごく悔しくて、いつも自分の中で妹に負けていることを否定したくて泣いていた。でも去年くらいから『美帆は美帆だし、自分は自分』だと考えるようになって、ひとりの選手として妹のことを捉えられるようになりました。だから今は、妹で良かったなと思いますね。身近に速い選手がいるから、自分も絶対に負けないように頑張ろうという気持ちになれるし、時にはアドバイスももらえる。すごく仲がいいから一緒にご飯を食べに行ったり買い物に行ったりするけど、そういう時だけ妹になって『お姉ちゃん、これ買ってよ』なんていうんです」と笑う。

 なかなか成績を出せなかった去年まではネガティブになることもあったが、それを経験して今年は"どんな時でも笑顔でいよう"を、自分の中での決め事にしたという。そんな気持ちが練習にも諦めずに取り組む姿勢を育んだのだろう。

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