【体操】リオ、東京五輪で期待大。人材豊富な男子体操界の未来 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 まずは跳馬の1回目で伸身ユルチェンコ3回捻りに挑戦し、ほぼ完璧な演技で出来ばえを示すEスコアも9.400点をもらった。種目別に進出するために必要な2回目の演技は失敗して2回を平均した得点は14.916点になったが、6位で種目別決勝進出を果たした。命名は同じ技を成功させた金煕勲(韓国)と連名の「シライ/キムヒフン」になったが、本人は「名前より跳躍を評価してもらえ、Eスコアが高かったのに手応えがある」と喜んだ。

 そして得意の床運動でも、最後に後方伸身宙返り4回捻りをピタリと決めて16.233点を獲得し、1位で種目別決勝進出を決めたのだ。もちろんその技にも「シライ」という名前が付いたが、その得点はロンドン五輪種目別優勝の鄒の得点を0.3点も上回るもの。それでも「そのくらいの点かなと思っていたが、今日の自己採点は80点。100点の演技は決勝にとっておきます」と、強心臓ぶりを示すコメントも口にしていた。

 その5日後の種目別決勝の初日、床運動の最終演技者となった白井は最後の後方伸身宙返り4回ひねりをピタリと決めると、両拳を強く握りしめてガッツポーズ。予選の後で「僕は健三よりDスコアが1点も低いのでかないませんよ。彼は床運動でメダルを獲るのが仕事。僕は個人総合です」と話していた内村はその瞬間、自分は2位につけていたにも係わらず、満面の笑みを浮かべながら両手を大きく叩いて祝福する。そしてその時点で15.600点で1位に立っていたダルトン(アメリカ)は、呆れたような表情で天を仰いだ。

 白井の得点は片足を一歩踏み出してしまった着地のミスが響いて16.000点だったが、文句のない優勝だった。

 床運動はここ数年、日本が不得意としていた種目であり、ロンドン五輪の代表選考会では団体戦をにらんで床運動を特殊種目とし、全日本選手権とNHK杯で好成績を残した加藤凌平を選考していた。

 そんな種目を得意とする白井の登場は、次のリオデジャネイロ五輪でも大きな戦力になるもの。さら2020年の東京五輪のときには年齢も23歳と、他の種目も克服していけば個人総合でも主力になる可能性があるのだ。

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