【レスリング】世界大会V14。ルール変更は吉田沙保里に「吉」 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●文 text by Miyazaki Toshiya photo by AFLO

 ライバルたちが唯一の死角と目論んだスタミナ問題をまったく感じさせなかった吉田は、「新ルールを自分に合わせることができた」と、試合後、誇らしげに語った。

 「ピリオドの時間が長い分、楽ではないですけど、もしポイントを取られても取り返せる。今までは1度の失敗も許されませんでしたが、逆にガンガン攻められます。試合運びに余裕が持てました」

 また今後は、オリンピック競技存続に向け、FILA(国際レスリング連盟)が行なう階級変更も、吉田を後押しするだろう。

 これまで世界大会で、男子グレコローマンスタイル・フリースタイル、女子フリースタイルはそれぞれ7階級だったが、オリンピックで実施されるのは、女子のみ4階級に限られていた。だが、IOCから男女不平等を指摘されたFILAは、3スタイルすべて6階級とすることを約束している。正式決定は10月になる模様だが、女子は48キロ級・51キロ級・55キロ級・59キロ級・63キロ級・67キロ級・72キロ級の7階級から、48キロ級・52キロ級・56キロ級・61キロ級・66キロ級・72キロ級の6階級へ変更される可能性が高い。

 これまで吉田は、ほとんど減量することなく55キロ級で戦ってきたが、変更後は52キロ級に下げることをすでに明言している。レスリングの計量は試合前日の1回のみ。ほとんどの選手はそれに合わせて減量し、計量後は猛烈に食べ、もとの体重に戻して戦っている。もともと55キロあるかないかの吉田は、常に3~4キロ重い敵と戦ってきたわけだが、52キロ級となれば立場は逆転するだろう。モントリオールオリンピック金メダリストの高田祐司・日本レスリング協会専務理事も、「階級変更は吉田を後押しする。パワーを生かせる」と断言している。

 現役選手でありながら、国内はもとより、世界を駆け回って獲得した「2020年東京オリンピック招致」「レスリング・オリンピック存続」に続き、最後は自らの「世界選手権優勝」で締めくくった、本人曰く「V3」――。自身の世界記録を更新する世界大会(オリンピック・世界選手権)14連覇を達成した吉田沙保里は、「リオにつながる」と晴れ晴れとした顔で告げ、すでに次なる頂点を目指し始めている。

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