【カーリング】
女王・中部電力を撃破。北海道銀行は「世界」でも勝てるか

  • 竹田聡一郎●文 text by Takeda Soichiro
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 とはいえ、北海道銀行の小笠原と船山以外の3選手、小野寺佳歩(セカンド)、吉田知那美(リード)、苫米地美智子(リード/リザーブ)も、五輪出場をかけたトライアルに臨むのは初めてのこと。中部電力とは立場が違っても、少なからずプレッシャーを感じていたはずだ。が、彼女たち3人は、今年2月の日本選手権で非常に苦い体験をし、それを糧にして大きく成長していた。

 苦い経験の舞台は、日本選手権の決勝だった。北海道銀行は予選リーグをトップで通過し、順調に決勝進出を果たしたが、日本一を決める大一番で中部電力に4-9であっさりと敗れてしまう。その際、小笠原と船山以外のメンバー、つまり小野寺、吉田、苫米地が、緊張からベストパフォーマンスを発揮できなかったのだ。

 実際に、北海道銀行はフロント(リード、セカンド)のミスをサードの船山が修正し、スキップの小笠原が何とか試合になるように"辻褄を合わせる"といったエンドの戦いに終始。最後までリズムに乗ることができなかった。試合後、小笠原は「(3選手にも)できる技術と能力があるのに、経験不足からああいう展開になってしまった」と、大舞台での経験不足を強調した。

 それが、転機となった。

 以来、小野寺、吉田、苫米地の3選手は懸命にトレーニングをこなした。経験不足を補うべく、技術、メンタル両面のレベルアップを図ってきた。なかでも、飛躍的な進化を見せたのが、セカンドの小野寺だった。中京大学(愛知県)に通いながらも、週末のほとんどは札幌に飛んで、厳しい練習を消化。さらに、夏休みに入ってからはずっと札幌で過ごして、特訓を重ねてきたのだ。

「今年の8月は、小笠原さんに喝を入れられながら、ほぼ毎日、(ストーンを)投げ込んでいました」(小野寺)

 いい意味で開き直れたのも良かった。「ミスをしても後ろが何とかしてくる」(小野寺)という気持ちでプレイするようになり、極度の緊張感から解放されて、逆にアグレッシブなプレイを見せられるようになった。そしてその成果が、今回の代表決定戦で実った。中部電力との最終戦では、小野寺がチームに複数得点をもたらすダブルテイクアウトを2度記録。小笠原に「今回は、私が救われた」と言わしめるほどの活躍を見せた。

 だが、北海道銀行の五輪出場がこれで決まったわけではない。12月にドイツで開催されるソチ五輪世界最終予選で、出場7カ国中(ドイツ、中国、イタリア、チェコ、ラトビア、ノルウェー、日本)、上位2チームまでに入らなければいけない。

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