【スキージャンプ】新たなライバル出現で、髙梨沙羅がさらなる成長

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真photo by Tsukida Jun

笑顔を見せた高梨沙羅(中央)、伊藤有希(左)、茂野美咲(右)笑顔を見せた高梨沙羅(中央)、伊藤有希(左)、茂野美咲(右) 昨シーズンはW杯16戦中8大会で優勝して初の総合優勝を果たし、世界選手権でも2位に輝いた高梨沙羅。ソチ五輪シーズンとなる今季は、化学工業品メーカーのクラレと所属契約を結び、父親の寛也さんがコーチに就任。さらにはスキーメーカーのエランが高梨のジャンプに合わせ、テール部分に"SARA"名前をプリントした特製のスキー板も作ってくれるなど、万全の環境で挑もうとしている。

「スキーに名前が入っていたのにはビックリしたけど、今年は状況が少しずつ変わり、どんどん競技に集中できる環境が整ってきていると思うので、その期待に応えられるように自分もしっかりとレベルを上げていかなければいけないと思います」

 国内開幕戦である7月14日の全日本サマージャンプ朝日大会では、圧勝でシーズンインした。その後に行なわれた8月の合宿では今年の状態を、「毎年シーズンインの頃はあまり調子がよくないが、それに比べると今年はいい方」と話していた。

 だがサマーシーズンが本格的に開幕すると、意外な伏兵の登場に戸惑わされた。

 その最初が、7月26日にドイツのヒンターツァルテンで行なわれたサマーグランプリの開幕戦だった。世界選手権優勝者で高梨のライバルでもあるサラ・ヘンドリクソンをはじめとするアメリカ勢や、ノルウェー勢が出場せず、高梨の優勝が固いと予想された大会だった。だが、昨シーズンのW杯では10位が最高で総合でも26位と、カナダの2番手選手に過ぎなかったアレクサンドラ・プレトリウスにいきなりの急成長ぶりを見せつけられたのだ。

 1本目の飛距離自体は、プレトリウスの103.5mに対し、高梨が104mと勝った。しかし、課題にしているテレマーク着地を決められず、4.4点のリードを許した。そして2本目は1mの差をつけテレマークを入れながらも、0.3点の負け。2本とも1位を奪われる屈辱の2位だった。

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