フィンスイミング界「期待の星」。女子高生・藤巻紗月を直撃 (2ページ目)

  • 川端康生●文 text by Kawabata Yasuo
  • 喜安●撮影 photo by Kiyasu撮影協力:横浜国際プール

フィンスイミングの他に、柔道もやっているという藤巻。フィンスイミングの他に、柔道もやっているという藤巻。 藤巻がフィンスイミングを始めたのは、小学6年生のとき。それまでやっていた競泳から転向した。

「競泳は3歳からやっていて、ジュニアオリンピックにも出ていたんですが、その頃からドルフィンキックが得意で、腕を使わなくても同じくらいのタイムが出ていたんです。それで得意なことを生かせる競技に転向しようと」

 中学時代にはジュニア記録、ユース記録を更新。今年5月の日本選手権では、50m「サーフィス」で日本記録まで樹立した。あっという間に日本のトップスイマーに躍り出たあたり、彼女に向いていたのだろう。

「動き的には競泳よりもシンプルだと思いますけど、そのシンプルな中に技術が凝縮されています。ちょっとのことで速さも変わります」

 練習は、週に3、4回。大きなフィンをつけている分、推進力はあるが、水の抵抗も大きく、毎日泳ぐと体が故障してしまうという。

 それでも、多い日には5000mくらい泳ぐ。
「練習がきつくて泣いているときもあります。そんな大げさには泣きませんけど(笑)」

 涙はプールの水に混ぜてしまうということだろう。
「それでも、(フィンスイミングを)やめたくなったことは一度もありません。フィンスイミングは自分に合っています。そんな競技にめぐり合えたんですから、やめたいとは思いません」

 目下の課題は、「スタート。リアクションが遅くて......。あと、入水からの勢いとかも大事だし。コーチにアドバイスしてもらいながら、フォームも少しずつ変えていかないといけないと思っています」

 もちろん、まだメジャーとは言えない競技。この日もフィンが入った大きなケースを肩からかけてやってきたが、「電車とかに乗っていると『何、持っているの?』と聞かれることがあります。『自転車?』と言われることが多いですね」

 練習環境も恵まれているとは言えない。早い話が練習プールの確保も容易ではない。その意味でも藤巻の存在は大きい。中学時代から何度かテレビ番組にも出演。それがフィンスイミングの認知度を上げることにもつながってきたからだ。

「先輩や大人の方たちが各地を奔走してデモンストレーション(体験会)をしたりして、必死で普及活動を行なっているので、私も私の立場でできることはやろうと思っています。競技人口が増えて、その中で勝てたらもっと楽しいと思いますから」

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