【月刊・白鵬】「ひつまぶし」好きの横綱、うなぎ不足を嘆く (2ページ目)

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 自らの調子は上向きです。場所の2週間前に名古屋に入ってからは、心も体も自分なりにうまく調整ができました。場所前、いつもの年より涼しい日が多く、稽古がしやすい環境だったということが大きかったですね。

 14歳までモンゴルで育った私は、暑い時期が得意とは言えません。力士になって初めて名古屋場所を迎えたときは、その蒸し暑さに面食らったものです。暑さだけならまだ耐えられるとしても、湿度が高いとクラ~ッときてしまいます。実際、2年前は朝稽古中に熱中症の症状が出たほどです(笑)。

 そのため、名古屋場所ではいつも以上に体調管理には気を使ってきました。その際、栄養源となるのは、やっぱり「うなぎ」です。特に名古屋名物の「ひつまぶし」は、私の好物でもあり、エネルギー源でもあります。名古屋場所の際には、行きつけのお店で何度もいただいています。

 そこで、心配なのが、うなぎが絶滅危惧種になるかもしれない、というニュースです。近年は、稚魚が獲れなくて、価格がかなり上がっていると聞きますが、このまま獲れなくなってしまったら、どうしましょう......。お店の方にとっては死活問題ですし、私に限らず、多くのうなぎ好きの方が困ってしまうのではないでしょうか。

 現代社会では、野菜の栽培や魚の養殖などはいろいろな研究が進んでいますし、病気を治すクスリや治療法などもどんどん開発されています。それと同じように、「うなぎ」もなんとかならないものでしょうかねぇ。みなさんも、あの"味"が堪能できないなんて、考えたくないですよね......。

 さて、相撲の話に戻しましょう。名古屋場所の目玉は、なんと言っても稀勢の里の綱獲りです。

 夏場所では、私と全勝対決(13日目)をするなど、メキメキと力をつけてきている稀勢の里。「次期・横綱候補」と言われて随分時間は経ちましたが、以前の稀勢の里とは、何かが違うような気がします。

 具体的に、「何が?」と問われると難しいのですが、土俵上でのたたずまいとか、雰囲気は確実に変わってきていると思います。以前は見られた"気負い"のようなものが、最近はあまり前面に現れなくなった印象があります。

 この連載コラムでも、彼のメンタル面の成長について触れてきましたが、とりわけ、出稽古に行くようになっての成果は大きいと思います。他の部屋の力士と稽古することで、さまざまな影響を受けて、自分の部屋の中だけでは得られなかったモノを手に入れたのではないでしょうか。

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