ひとつしかない五輪追加競技の枠。正念場を迎える各団体の動向は? (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Getty Images

 だが、最終候補入りしたといっても、喜んでいる余裕はない。9月8日のIOC総会で決定される追加競技は「1」である。いわば、これからが正念場なのだ。

 決定から一夜明けた翌日、福田会長は疲れ切った表情だった。

「ホッとはしている。でも決勝に進んだだけ。IOCのお陰でレスリング界は改革できたのだから、もう歴史、伝統にあぐらをかかないで、時代に合わせて変化していかないといけない。改革はすぐ、目に見えるカタチで実行していく」

 ラロビッチ新会長の下、合計ポイントで争う方式にするなど、観客にもわかりやすいルールを導入した。日本では6月の学生の大会から適用される方針で、9月の世界選手権でも実施される見通しである。ただ五輪銅メダル数の半減案(レスリングは銅がふたり)や、男女均等化のための種目数変更は調整が難航している。

「いろんな宿題がある」と福田会長は言う。「これからもIOCに改革をアピールしていかないといけない。IOC委員の情報を集め、各国の連盟を通して、ロビー活動を強化していきたい。着実に一歩ずつ、足を運んでいかないといけない」

 15人のIOC理事会と違い、IOC総会の構成は100人余のIOC委員となる。IOC理事会はレスリング除外によるスポーツ界の猛反発に驚き、一転、レスリングを候補競技に残すことで権威の回復を図った。IOC総会では、それぞれのIOC委員の利害、考えで判断されることになる。

 だから難しい。理事会で1位抜けしたといっても、総会では関係ない。新規五輪競技入りを狙うスカッシュ、3大会ぶりの復活を期す野球・ソフトボールとも、レスリングにとっては強敵である。

 IOC関係者の話によると、どうも下馬評では英国発祥のスカッシュの人気が高いようだ。実はPR戦略のアドバイザーが、ロンドンの2012年五輪やリオデジャネイロの16年五輪、カタールの22年サッカー・ワールドカップなどを相次いで招致成功に導いたマイク・リー氏。辣腕だ。

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