決定まであと100日余り。2020年五輪の招致レースはどうなる? (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu photo by Reuters/AFLO

 東京は、晴海の選手村を中心とする半径8キロ以内に競技会場の85%を配置する「コンパクト五輪」を前面に押し出す。全面建て替えの国立競技場を含め、全競技場の4割を既存施設でまかなうプランで、64年東京五輪のレガシー(遺産)を活用する。施設、運営などの開催能力、財政力、インフラが強みで、「安全、安心、確実な五輪」を訴えることになるだろう。

 さらには「選手第一」もキーワードだ。前回16年五輪招致の失敗から、計画では選手村を1・4倍の44ヘクタールに拡張した。コンパクトな施設群と合わせ、選手には競技以外の負担が少ないとしている。IOC調査による東京都民の五輪開催支持率が、前回(4年前)の55・5%から70%に上がったのは朗報か(最新のイスタンブール市民の支持率は83%。マドリード市民は76%)。

 課題は、7年後の東京の将来像、五輪開催による平和運動への貢献が見えないところだ。スローガンの『Discover Tomorrow<未来(あした)をつかもう>』の具体的なイメージが浮かばない。放射線量や地震など、東日本大震災による不安も完全には払しょくされてはいない。

 また、IOCアスリート委員の選挙活動で違反があったとして、ハンマー投げの室伏広治が委員候補から除外された件で、室伏と日本オリンピック委員会(JOC)がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に処分撤回を訴えていたが、それが却下された。そのため、室伏が招致活動の第一線に出られなくなったのも痛い。

 目下、一番勢いに乗っているのがイスタンブールである。経済発展を背景に都市基盤や施設の整備をダイナミックに進め、国際大会を次々と開催している。欧州とアジアの2大陸の間に位置し、スローガンで「Bridge Together<ともに橋をかけよう>」と訴えかける。これはインパクトがある。暗に、宗教、文化の橋渡しもイメージさせ、イスラム圏初開催の意義を伝える。

 マドリードも東京と同様、「コンパクトな五輪」をウリにする。多くの既存施設を活用し、スローガンに「Illuminate the Future<未来を照らせ>」を掲げる。

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